2012/02/28

一勝九敗



title:一勝九敗
author:柳井正
publish:新潮社

近年の日本でこれまで大企業に育てあげた会社はないと思う
ヒートテックと+J
この2つは指名買いをする
でもそれ以外の商品はいまだにユニクロ品質だと思ってしまって買わない

昔のイメージが強くて品質的にあまりよくない
週末のセール時期にしか買いにいかない
ユニクロの商品っていうとちょっと恥ずかしい
などちょっといいイメージがなかったのが本音

柳井さんに関しても
メディア煽動のおかげで「部下を鍛えられなかった」経営者というイメージ

でもこの本を読んで
イメージがガラッと変わった

イチからユニクロを大きくしていった柳井さんは現場主義
安かろう悪かろう時代にSPAにて自社責任で価格、品質、量に責任を負う
安い中国で品質向上のために日本の指導者を送る
週末セールは郊外型店舗に足を運んでもらうため
ベーシック、ユニセックス、機能性のあるものを作っていく

それぞれの行動に対して理念や意味がある
大企業ならではの大企業病に不安を抱いているのにも安心した

実践こそが商売、経営の基本であり
頭のいい人がいっぱい入る(MBA取得者、高学歴者など)けれど
計画で終わることが多いという

つまり、頭がいい人と頭がキレる人は違うということなんだろうな
商売人・経営人=頭がキレる
MBA取得者=頭がいい
頭がいいことを良しとしている世間であるけれど
頭がキレることこそが成功の要なんではないかな



会社というものは、「組織や資産規模が売上規模に応じて変動するような仕組み」が効率的だし、そのような柔軟性を持たないといけない。固定化された組織は早晩、ダメになる。会社は期限があるものであるがゆえに、環境変化に対応して絶えず変化させていかなければ生き残ってはいけない。経営者は企業規模がどうであろうが、収益を上げ続けることが責務なのだ。(p.18)

「お客様の要望としてのセルフサービス」の店が理想だ。それが我が社のモットーになる「ヘルプ・ユアセルフ」方式だった。本屋やレコードショップは求められていない限り、接客はしない。その分、お客サアの欲しいものを欠品しないように品揃えする。そういった買いやすい環境を作るに徹すればいいのだ。(p.30) ※たしかに、接客された覚えがない

郊外型店舗を出した以降、ユニクロの対象顧客をノンエージ、ユニセックスとし、トレンド品よりもベーシックな商品を扱うようにしていった。名のあるナショナルブランド以外の商品にも、良いものがあれば相当の需要があるということだ。(p.36)
※スタバもそうだけど、最初からコンセプトや戦略を決めているわけではない。顧客動向を見届けてから、変更をして、ここぞ!というものを見つけていった。需要のパイを見極めているのかな。

一号店の商品は、メーカーの低価格が中心で、メーカーから仕入れてくる商品は、安いが品質が二の次だった。(p.36)

販売価格を小売店がコントロールするには別注を増やすしかない。店舗数を増やし、バイイングパワーをつけると同時に、自主企画商品をメーカーへ製造委託する方式(=別注)をとるしかないのだ。(p.38)

直営店だけをどんどん増やしていけばいいが、設備投資資金が足りないこともあった。その点、FC式は魅力だ。(p.40)

「商売人」は、売ったり買ったりすること自体が好きな人。
「経営人」は、しっかりした目標を持ち、計画を立て、その企業を成長させ、収益をあげる人。(p.50)

良い立地に無理して出店しても賃料が高いと、売れているときはいいのだが、売れなくなったとたんに、もたなくなる。われわれの力に見合った立地、それが良い立地ということなのだろう。(p.61)

全国紙や週刊誌に「ユニクロの悪口を言って100万円」という広告を出した。へたにコンサルタントなどに聞くよりも、直接お客様に不満を聞いたほうが早いという考え、やってみた。集まった悪口は1万通弱。ほとんどが品質へのクレームだった。(p.68)

自分たちが送り出した商品の失敗を直視して、研究し、改善する。失敗の連続だったが、そこから次の成功の芽を導き出す。ユニクロの品質向上とは、現場で学んだ失敗の数々が大きく寄与している。つねに「現場を知る」ことこそ、経営の原点だと考えている。(p.69)

異業種の人のほうが、この業界の常識にとらわれず、「なぜだろう」「どうしてだろう」と原理原則から取り組むことができるからだ。同業種だと、「こうなっているのが当たり前」と見なして、無理・無駄の存在する現状を肯定しながらも進もうとする。改革には現状否定が欠かせない。わが社には、自分で本当に考え、判断できる人、さらに言えば「働かせる人」ではなく、「経営ができる人」が必要なのだ。(p.75)

日本中にあふれている雑誌の類も、読む人にまったく敬意を表していないのではないか。編集者側に表面的な商業主義が蔓延していて、読み手に対する敬意を持った雑誌が少ないと感じる。刹那的に人目をひくのではなく、書き手や誌面のクオリティを高めるのが発信者側の責任だと思う。(p.82)
賛成!日本の雑誌はモデル主義でPR主義な気がしてならない。編集というより、PRした勝ちってかんじ。

服にはブランド品の“高くてよい服“と、ノーブランドの”安くて悪い服“の2通りしかないとほとんどの人が考えている。われわれはこの既成概念を破ろう、と取り組んだ。(p.84)
ニッチを狙っているという意味でもある

流行や小手先のデザインよりも、日常を快適に過ごせる、老若男女誰でも着られる、しっかりしたベーシックな普段着こそ、多くの皆さんが求めているのではないか。(p.85)

中国で日本の品質基準で生産してもらおうと思ったら、日本と同じような生産方式でやらないといけない。生産技術の向上が必須だ。それでは、技術指導する人はどうするか。繊維産業が衰退した始めた日本には、年配の熟練技術者の方々が活躍する場がなくなりつつあった。そのような人に技術指導を依頼したら、ぜひやりたいと次々と名乗りをあげてくれた。(p.85)
おもしろいやりかた!!

どんな優秀な経営者で、たとえ小さな会社であったといても、すべての業務を一人で完璧に操りフォローできるということはできない。各業務、各部門の「手足」が同時に「頭脳」でなければ、うまく仕事が回らないし、完結しないはずだ。(p.87)
大企業なら、成長期はワンマンになりがち

ABC改革のポイントは、次のようになる。
FR(ファースリテーリング)のイノベーション。作った商品をいかに売るかではなく、売れる商品をいかに早く特定し、作るかに業務の焦点をあわせる」 ※商品の早期化
「マーケティングを徹底し、マーチャンダイジングと連動して“売れる理由”を売り場で表現することに全エネルギーを集中する」
「個店対応、SKU管理(色やサイズ別の商品管理)を、最初の企画生産から最終の販売まで徹底し、無駄の排除をする」 ※情報化
(p.90)

本部にすべての「頭脳」がって、店舗は本部が決めたマニュアル通り動く「手足」となるのが理想形だった。店舗を出すということは、単純化すると「金太郎飴」をどんどんつくることに通じる。しかし、本部が偉いのではなく、お客様との接点の最前線である現場こそが重要なのだ。(p.92)

すべての店舗に頭脳があり、商品を売らされるのではなく、商品にコミットし、自分で売る感覚を日常化する。これが実現すれば、コンピューター管理と人間の頭脳が連動した“生きたシステム”になる。(p.93)

広告は広告主がやるもので、クリエイターや広告代理店がやるものではない。広告主が自分たちで企画して作り、一つの機能としてクリエイターや広告宣伝会社を使うという方式でないとうまくいかない。日本の広告代理店の話は、手段の言葉ばかり。何を伝えたいか、それをどういう方法で伝えるかというかという、根っこの部分の話はほとんどない。とあるとき気づいた。(p.106)

「機能」に対して、相応のお金を支払う。これが経営の原則だ。(p.107)

広告主の側も代理店まかせにせず、会社の方針や経営理念をきっちりクリエイターに伝え理解してもうら必要がある。これは経営者の責任だ。その思いを理解してもらったうえで、視聴者の側に立って、クリエイターには一種の翻訳作業をしてもらう。(p.107)

日本人カメラマンのときは、最初から構図を決めてその通りに撮っていく。「段取り重視」は効率的な側面もあるが、形式的になりすぎることがあり、クリエイティブな世界には向かない方法だ。70点はとれるが、100点は取れない。(p.108)

クリエイティブな仕事をする人は、もっと自由に、いろんな発想をしながら仕事をしなければならない。という臨機応変のスタイルだ。(p.108)

違った考え方の人が違ったやり方で仕事をやり始める。そうすると、個々の仕事はよいかもしれないが、全体的にまとめるとバラバラで効率が悪い部分が出てくる。そのために、経営理念を作った。(p.112)

会社を経営するうえで一番重要なのは、「どういう会社にしたいのか」と、「どういう人たちと一緒に仕事をしたいのか」を明確に示すことだと思う。(p.113)

商売というのは実践である。経営も実践。頭だけで考える、あるいは知識選考で考える人は、課題や問題点を全部整理して、優先順位をつけて、「これはこういうことです」という現状分析だけで停止してしまい、実践までたどりつかない。実践までできたとしても、実践しながら今度は考えなくてはいけない。実践しがら考えるということは、「身体を使う」ということであり、場合にとっては単純なことを繰り返してやらないといけないこともある。(p.120)

経営をやっていて、自分には現場感覚が足りないと思ったら、そのときには店舗に言ってもらわないといけない。単に店舗に研修に行くという形式になってしまっては、何の意味もなくなってしまう。(p.121) ※自主性があるかどうかが大事

マニュアルにないことに直面した場合、まず「良識」で判断すべきなのだ。マニュアルは原則を書いたもので、本来、仕事の最低標準ラインの底上げのためにある。(p.132)

店長の仕事を全うすれば、本部にいるよりも高収入が得られる。このような仕組みを作らないと、小売業は繁栄しない。店長が最終目標なのである。そういう意識がないため、店長という職種に対して、誇りを持てないのだ。(p.136)
「ルールを破れ」と同じことをいっている

ワンマンのもとで、「手足」を勤めた人々がやがてその会社で偉くなっていく。どいうことが起こるかというと、偉くなった人はそのワンマンと同じように自分の手足を作っていく。頭は俺だから、手足をやれ!という具合だ。そして、自分が手足時代から一歩も出ていない発想を繰り返して、どんどん経営レベルを貧困化させていく。一人の人間が全部決めてやるという事は、マンネリ化する時期が早まるということを意味する。(p.154)

成功よりもむしろ失敗のほうが勉強になる。一方、成功というのは、ここまで可能性があるということを知らせてくれる、元気の源のようなものだ。(p.167)

郊外型店であれば、半径何キロメートル以内にどの程度の潜在顧客がいるか「商圏人口」というものを把握しておき、そこに効果的なチラシをまくことが重要になってくる。チラシ配布枚数も、配布する範囲も調整しながら経験をつんでいく。都市型店は、商圏がはっきりしないし、チラシの効果がまったくない。商品を完全に絞りこみ、広い地域に宣伝広告することを考えなくてはいけない。多くの種類の商品を、年齢層や男女別にターゲットを絞った消費者層に売る事よりも、フリースのような一つの商品を年齢や性別も選ばない不特定多数の人に売る方が絶対に効率がいい。(p.170)

優秀な人たちが入社したのはいいが、内容よりも形式を整えたり、とりあえず商売を回していればいいや、と考える人、実践を伴わない机上の空論を唱える人も増えていった。(p.172)

成功したと思うこと、それがすなわちマンネリ化と保守化、形式化、慢心を生む源だ。(p.173)

日本での出店の実例を考えると、ある地域に集中出店して、一定の店舗数を超えると、急に売上が伸びる。ドミナント現象が起きるのだ。(p.178)

新しく靴の事業に乗り出すとすれば、なるべく短い助走期間でスタートさせる。スタートさせて、そこで何かのポイントで失敗をする。そこを次のステップで修正する。いい失敗であれば、必ず次のスタップにつながる。いい失敗というのは、失敗した原因がはっきりわかっていて、この次はそういう失敗をしないように手を打てば成功につながるというもの。「失敗の質」が大事だ。(p.198)

計画したら実行するということが大事だ。実行するから次が見えてくるのではないだろうか。経営者本人が主体者として実行しない限り、商売も経営もない。頭のいいと言われる人に限って、計画や勉強ばかり熱心で、結局何も実行しない。商売や経営で本当に成功しようと思えば、失敗しても実行する。また、めげずに実行する。これ以外にない。(p.199)

起業家十戒
1、 ハードワーク、一日24時間仕事に集中する
2、 唯一絶対の評価者は、市場と顧客である
3、 長期ビジョン、計画、夢、理想を失わない
4、 現実を知る。その上で理想と目標を失わない
5、 自分の未来は、自分で切り開く。他人ではなく、自分で自分の運命をコントロールする。
6、 時代や社会の変化に積極的に対応する
7、 日常業務を最重視する
8、 自分の商売に、誰よりも高い目標と基準を持つ
9、 社員とパートナーシップとチームワーク精神を持つ
10、 つぶれない会社にする。一勝九敗でもよいが、再起不能の失敗はしない。キャッシュがつきれば、すべてが終わり。

経営者十戒
1、 経営者は、何が何でも結果を出す
2、 経営者は明確な方針を示し、首尾一貫せよ
3、 経営者は高い理想を持ち、現実を直視せよ
4、 経営者は常識にとらわれず、柔軟に対処せよ
5、 経営者は誰よりも熱心に、自分の仕事をせよ
6、 経営者は鬼にも仏にもなり、部下を徹底的に鍛え勇気づけよ
7、 経営者はハエタタキにならず、本質的な問題解決をせよ
8、 経営者はリスクを読みきり、果敢に挑戦せよ
9、 経営者はビジョンを示し、将来をつかみ取れ
10、 経営者は素直な気持ちで、即実行せよ
(p.204)

チームで仕事をする場合に一番悪いのは、マンネリ化・硬直化・形式化・表面主義だ。例えば、「仕事をやっているような格好はしているが、まったく成果があがらない」状態。(p.210)

日本にはもともと資源がほとんどないが、文化やいろいろなアイデアも独自のものは少ない。日本は中国や欧米諸国から伝来してきたミックス文化の国だ。その意味からも、世界中の才能を活用しながらやっていくのは、当然の流れで、世界中の企業と競争するためにもそうせざるを得ない。(p.211)

たとえ、お年寄りに評価されていたとしても、若い人たちに評価されないと将来性はない。単にトレンドを追うのではなく、若い人に本質的な点で評価されるにはどうしたらよいのかを考えなくてはいけない。(p.212)

実行した個々の内容(失敗や成功)を具体的に分析し、因果関係がはっきりとわかるまで考え抜く事が大切だ。抽象論ではなく、具体論で考える必要がある。また、次の段階で成功するには、徹底分析した経験の蓄積が必要となる。(p.219)

自分はプロであると自覚した上で、「勝つ」ということが目標だと思ってほしい。勝てないプロには値打ちがないということだ。(p.220)

成功する会社に共通しているのは「正しいこと、小さいこと、基本」を徹底的にやりきるということだ。(p.222)


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